【2st 4st】2ストロークと4ストロークエンジンの違いとは?

 

バイクのカタログやメーカーサイトでバイクの諸元データを見ていると、結構な頻度で目にするのが「4ストローク」という単語。

 

以前は「2ストローク」という機関もありましたが、今日現在では2ストロークエンジンの生産が世界的に終了しているため、現行モデルのバイクは軒並み4ストロークエンジン搭載車ばかりになってしまいました。

 

そのため、2ストロークエンジンという機関そのものを知らないという方が増えております。

 

今回は、今さら人に聞けないバイク用語「2ストローク」と「4ストローク」の違いについて解説させて頂きます。

 

バイクに採用されているエンジンはどんな種類?ストローク数の違いとは?

 

バイクに採用されているエンジンは、「レシプロエンジン」というピストンの直進運動を回転運動に置き換えることで出力を発生するタイプのエンジンです。

 

自動車では「ロータリーエンジン」や、「ハイブリッドエンジン」などが存在しますが、「オートバイ」に分類される乗り物は99%このレシプロエンジンとなっています。

 

「2ストローク」と「4ストローク」は、燃料による爆発までの行程数を表したもので、2ストロークは2行程、4ストロークは4行程ということになります。

 

エンジンの構造上、2ストローク・4ストロークともに、ガソリンを吸う・圧縮する・点火する・排気ガスを出すというサイクルは共通事項ですので、実質的には行程が多いか少ないかだけという見方もできます。

 

こうして聞くと、「なぁんだ、たったそれだけの違いなの?」と思われるかも知れませんが、両者の間には大きな違いが見られます。

 

まずは2ストロークエンジンに関するご説明からさせて頂きたいと思います。

 

シンプルな構造で高い出力を発生するのが2ストロークエンジンの特徴!

 

2ストロークエンジンの定義は、「1往復(行程換算2回 (=2stroke))で1周期の行程が完結するエンジン」となっており、クランクシャフト1回転(ピストン1往復)の度に燃料を噴射する仕組みとなっています。

 

まずは↓のgifをご覧ください。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/2%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%AF%E6%A9%9F%E9%96%A2

 

まず、クランクケース(クランク室)からガソリンと空気の混合気を取り入れて圧縮し、最上部の点火プラグによって混合気に点火され、爆発を起こします。

 

その爆発によってピストンが押し下げられ、同時に排気が行われます。

 

そして再びクランク室に送り込まれた混合気が同行程を繰り返すことで出力を発生するのが2ストロークエンジンの仕組みとなっています。

 

行程数が少ない分、仕組みとしては4ストロークエンジンに比べてシンプルなものとなっており、以前は50ccの原付1種クラスのスクーターなどに多く採用されていました。

 

現在ではその生産が世界規模で終了しており、現存するエンジンが2ストロークエンジンの全てとなっています。

 

2ストロークエンジンのメリット

 

すでに生産が絶えてしまった2ストロークエンジンには、3つのメリットがあります。

 

1.エンジン構造がシンプルであるため、製造コストが低く安価。メンテナンス性が高い

 

2.構成パーツが4ストロークエンジンに比べ少ないため、軽量に仕上げることができる

 

3.4ストロークエンジンと比べ、ピークパワー・トルク値が高くしやすい
まず1.&2.の理由についてですが、4ストロークエンジンと比べ2ストロークエンジンは、クランクシャフト・プラグ等の必要部品を除けば圧倒的に構成パーツが少なく、必然的に製造コストが減少します。

 

設計上の労力も低く、必要なパーツが少なくなることにより、比較的安価で製造することが可能となっています。

 

パーツが少なく構造がシンプルであるため、複雑な4ストロークエンジンと比べメンテナンス性も高く、50ccスクーターに搭載されているような短気筒エンジンであれば初心者でも分解整備が可能です。

 

そして3.の理由ですが、ピストン1往復(クランクシャフト1回転)につき、1回分の出力行程が発生することにより、出力・トルク値が上昇するというのが2ストロークエンジンのメリットです。

 

 

事実、2ストロークエンジン搭載の旧車は現在でもメンテナンスさえしっかりと行っていれば、販売当時のコンディションのままで走れるほど元気な車両も多く、自分でメンテナンスを行うのであればかなりタフな一面を持っています。

 

2ストロークエンジンのデメリット

 

今度は逆に、2ストロークエンジンのデメリットについて触れさせて頂きます。

 

  1. 燃費性能が悪い・ガソリン代が高くつく
  2. パワーバンドが4ストロークエンジンに比べて狭く、波が激しい(ピーキー)
  3. オイルを消費し、酷使するとエンジンが焼き付いてしまう恐れがある
  4. 混合気とオイルを燃焼させることにより、排気ガスが白煙となって視界を狭めてしまう

 

1.に関してですが、こちらはクランクシャフト1回転の間に2回の混合気が送り込まれるため、4ストロークエンジンと比べ燃料消費量が多めになってしまいます。

 

2.については、回転数・掃気ポート・排気ポート・エキゾーストの3車のバランスが良い時に初めて大きなパワーが生み出されます。

 

4ストロークエンジンは3つのうち、2つが良好であればパワーが出せるため、このバランスのよい領域が限られている点が2ストロークエンジンの弱点となっています。

 

3.については、2ストロークエンジンの構成上、潤滑油(オイル)を同時に燃焼させることで各機関の潤滑を促す性質を持っています。

 

そのため、オイルがなくては簡単に焼き付きを起こして動かなくなり、酷使するとその焼き付きの可能性が大幅に高くなってしまうという危険性があります。

 

4.も2ストロークエンジン特有のデメリットで、オイルと混合気を同時に燃焼させることにより、白または灰色っぽい排気ガスが多く生み出され、時には視界を妨げるほどの量を発生することがあります。

 

また、↓のツイート画像のように排気ガスとともにオイルそのものを排出する場合もあるため、2ストバイクが走り去った後のアスファルトはオイルまみれになってしまう場合も。

 

 

1970年代から始まった「排出ガス規制の強化」により、徐々に世界規模で自動車・バイクに関する風当たりは強くなり、年々様々な制約が課せられることになりました。

 

その結果、2000年代には2ストロークエンジンの生産が事実上不可能となってしまい、現在では新規に製造されるエンジンは4ストロークの環境基準値を満たしたものでなければ認可が下りなくなってしまいました。

 

パワーバンドに入れば怒涛の加速力と圧倒的なパワーを発揮するため、WGPなどの大レースでは2ストロークエンジン搭載のレース車両が大活躍したため、2ストロークエンジンの生産が終了してしまった現在はプレミアがつき、中には当時の新車価格を大幅に上回る車両も少なからず存在します。

 

燃費性能や安定した出力を発揮!環境性能に優れているのが4ストロークエンジンの特徴!

 

今度はもう一方の主役である「4ストロークエンジン」の方に目を向けてみたいと思います。

 

4ストロークエンジンの定義は、「混合気を燃焼室へ送り込み、燃焼してガスを排出するまでの行程が、ピストンの上昇と下降が2回ずつの4行程で完結するエンジン」となっています。

 

↓のgifはその一連の流れです。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/4%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%AF%E6%A9%9F%E9%96%A2

 

最初はピストンが降下し、混合気の「吸入」から始まります。

 

続けてピストンが上死点まで上がり、混合気が「圧縮」されます。

 

その後、点火プラグによって混合気に点火され、爆発を起こし下死点までピストンが押し下げられる「燃焼・膨張」の行程となります。

 

最後は爆発の慣性により、ピストンが上昇することでシリンダーの外へ燃焼ガスが押し出される「排気」行程によって1行程が完結します。

 

行程数が多いため構造は必然的に複雑化し、製造コストが2ストロークエンジンよりも高くついてしまうため、以前は一定以上の排気量の車種に用いられることが多かった時期がありました。

 

なぜ複雑な構造で製造コストの高かった4ストロークエンジンが現在の主流になったのでしょうか?

 

4ストロークエンジンのメリット

 

比較的シンプルな構造の2ストロークエンジンと比べ、複雑で製造コストの高かった4ストロークエンジンの方は生き残り、合理的とも言える2ストロークエンジンの製造はすでに絶えてしまいました。

 

その理由は、4ストロークエンジンのメリットの大きさによるものです。

 

以下、4ストロークエンジンのメリットとなっております。

 

  1. 2ストロークエンジンと比べ、圧倒的に燃費性能が高い
  2. エンジンオイルを燃焼させないため、排気ガスが2ストロークエンジンよりもクリーン
  3. オイルを消費しないため、エンジンの焼き付きが起こりにくくタフである
  4. パワーバンドの狭い2ストロークエンジンよりも満遍なくパワーを発揮しやすい

 

ちょうど「2ストロークエンジンのデメリット」で挙げた点が全て反転した形になりますが、4ストロークエンジンには4つの大きなメリットがあります。

 

いずれも限りある資源を有効活用し、環境へ配慮するエコロジー性に直結するメリットであるため、2ストロークエンジンよりも「排出ガス規制」などの基準値をクリアしやすい特性を持っています。

 

2ストロークエンジンの場合、エンジンオイルは「消費」するものですが、4ストロークエンジンの場合は「循環」させるためのものであり、定期的な交換が必要になりますが、エンジンオイルがなくなることによる「焼き付き」の危険性が少ないことも大きなポイントのひとつです。

 

 

それでも焼き付く可能性は決してゼロではありませんが、50ccバイクでも「ホンダ スーパーカブシリーズ」のように、耐久性の高いエンジンを作ることが容易であることも4ストロークエンジンが生き延びた理由にひとつに挙げられます。

 

4ストロークエンジンのデメリット

 

今度は4ストロークエンジンのデメリットに触れさせて頂きたいと思います。

 

こちらも「2ストロークエンジンのメリット」が反転した、と解釈して頂ければ分かりやすいかと思います。

 

  1. ピークパワー・トルク値が2ストロークエンジンに比べ低くなりやすい傾向にある
  2. 構成パーツが多いため複雑で、製造コストが高くメンテナンス性が低い
  3. パーツが多いためエンジン自体が重い

 

クランクシャフト1回転につき1行程の2ストロークエンジンと比べ、4ストロークエンジンは単純にその半分となってしまいます。

 

そのため、どうしても最高出力・トルク値の面では2ストロークエンジンに軍配が上がってしまいます。

 

ただし、今日現在は排気量クラスによる自主規制値などの関係により、国産400ccクラスまでは殆どの車種が従来の上限値の3分の2程度まで出力が規制されるようになりました。

 

その関係で以前ほど出力・トルクの優劣の差は少なくなっており、大排気量エンジンの耐久性が高まったことで総合的に高出力を生み出す土壌が出来上がったことにより、4ストロークエンジンの有利性が高まりました。

 

2.に関しては耐久性・性能面の関係でどうしても複雑になるため、こちらに関しては完全に2ストロークエンジンの方に軍配が上がります。

 

3.についても同様ですが各メーカーの技術開発により、車体の軽量化・エンジンの高性能化でカバーされるようになっています。

 

 

2ストロークエンジンの生産が終了したことにより、新規に販売されるバイクは全て4ストロークエンジン化しましたが、これは同時にパーツの安定供給が長期間続くことにも繋がりました。

 

エンジンの耐久性自体も大きく底上げされたため、「故障時の交換パーツが容易に入手できる」という安心感が伴うようになったため、総合的に見ると4ストロークエンジンは生き延びるべくして生き延びたという見方もできます。

 

それぞれ異なるメリットあり!違いを知っておくと多彩な選択肢が!

 

以上、2ストロークエンジンと4ストロークエンジンの違いを解説させて頂きました。

 

エンジニアリングの観点から言うと、かなりざっくりとしたものとなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?

 

現在、生産が行われているバイクのエンジンは4ストロークエンジンの方のみですが、2ストには2ストの良いところがあります。

 

もちろん、4ストにも4ストの良いところがあり、両者の優劣だけでは測れない楽しみ方というものも存在します。

 

まずは両者の違いを知っておくことで、バイクを操る・バイクを整備するという楽しみ方に幅が出ますので、興味が湧いた方は一度2ストバイクに乗ってみるのもおすすめです。

 

現在では2ストロークエンジン搭載のバイクは旧車の扱いとなり、多くの車種にプレミアが付くようになりましたが、比較的手を出しやすいレベルに留まっている車種も多数あります。

 

今後さらにプレミア化する前に、ご興味の湧いた方はぜひお試しください。